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負のデンタルスパイラルについて
2020年11月17日(火)
一度治療した歯が再びむし歯になってしまう、そんな経験をする方が多くいらっしゃいます。
「治療後はしっかり歯みがきをしていたのに、むし歯が再発してしまった」という声もよく聞きます。
このブログを読んでいて、「自分もだ」と思い当たる方もいるかもしれません。多くの人は「むし歯の治療が終われば、歯は健康な状態にもどって一安心」と考えていると思います。
しかしそんな期待に反して、むし歯は再発してしまいます。では何故そのようなことが起きるのでしょうか?
むし歯の治療とは、基本的にむし歯になってしまった部分を削って、修復物を装着します。
これは身体にとっては、人工的な異物を取り付けられていることになります。一方、人間の身体は生きています。生きている限り、身体は常に変化していきます。
髪の毛や爪は伸びていきますし、肌も加齢とともに変質していきます。
骨の形や硬さも一定ではなく、常に変化しています。それと同じように、生きている限り歯質も当然変化していきます。
しかしそこに装着された人工の修復物の状態は変わらないため、やがて歯の状態と合わなくなってきてしまいます。
そして歯と修復物の間に小さな隙間が生まれ、そこにむし歯菌が入り込み、再びむし歯になってしまうのです。つまりむし歯治療は半永久的なものではなく、元々再発のリスクが高いものなのです。
むし歯を再治療したことがある方は思い出してみてください。
最初は小さなつめ物だったものが、再発後は歯をさらに大きく削って大きなつめ物になったと思います。これを繰り返していけば、歯はやがてかぶせ物になり、最終的には抜け落ちてしまいます。これが「負のデンタルスパイラル」です。
大切なことは、まずこのスパイラルに乗らない(=むし歯にならない)こと。
そして乗ってしまったのであれば、このスパイラルの進行を可能な限り止めること、遅らせることです。そのことについては、次回の「予防についての考え方―長期予防的低介入治療」でお話いたします。